映画以上のエンターテイメント。耳で聴くオーディオブック「kikubon(キクボン)」の代表に突撃インタビュー!

オーディオブックとは、本や小説などの書籍を朗読して収めた音声コンテンツのこと。
通勤時間や家事の隙間時間に聴けると今話題のサービスなんです。
そんなオーディオブックの中でも、創業7年になる「耳で聴く本」、kikubon(キクボン)を提供している株式会社RRJ代表、橋満克文さんにkikubon(キクボン)の魅力についてお話を伺いました!
目の見えないユーザーからの一言がきっかけ
――kikubon(キクボン)を作ったきっかけはなんだったのでしょうか?
元々、RRJがラジオを作っている会社でスタジオの空き時間を活用したいと思ったときにオーディオブックというアイディアが思いついたんです。
僕自身、銀河英雄伝説の大ファンなので、銀河英雄伝説の朗読が一番はじめの入口でした。
当初は本一冊だけをアプリで出す予定だったのですが、そのことをたまたま聞いたユーザーさんが目の見えない方たったんです。
――それはすごい偶然ですね!
ええ。本当にそうなんです!
その方が、kikubon(キクボン)は目の見えない方にとって「映画以上のエンターテインメントだ」と言ってくれたんです。
純粋な読み聞かせだと、フラットになっていて、聴き慣れてしまう。
しかし、キクボンは声優さんがお芝居を入れて演出が入っている。
映画を見るよりも想像力の余地があってエンターテインメントだ!と言ってドハマりしてくださいました。
そこから他の作品も聞きたい!というリクエストをもらい、kikubon(キクボン)という名前で物語に特化したサービスを立ち上げたのが始まりなんです。
――だからキクボンは、SFやファンタジーなど物語に特化したジャンルが多いのですね!
はい、ビジネス書を取り入れない理由もこの理由です。
読み聞かせではなく、声優さんに入ってもらいエンターテインメントとしての作品を作り出すことにkikubon(キクボン)は価値を置いています。
想像力を膨らませるからこそ、大変な時がある
――kikubon(キクボン)を作る上で大変なことはなんですか?
実は、ミステリーを作るのが大変なんです。
お芝居を入れているので、犯人を犯人のように演じられない。
ネタバレが芝居に入らないように、作品によってはミスリードをどのように演じるかなどに注意を払っています。
基本的には、製作者と声優とですり合わせをして作品をどのように作るか決めています。
SFでは、稀に性別のないキャラクターがいるので、その場合どっちの性別でキャラクターを演じるかなどについて話しあう場面もありますよ。(笑)
”聞きやすさ”を重視した声優さんの選定
――たくさんの声優さんが朗読をされていますが、どのように声優さんを選定されているのですか?
ナレーションもできてお芝居のできる声優さんにお願いをするようにしています。
アニメがワンワードや短い文章なのに対して、本は8時間など長時間かかるものなので「聞きやすさ」が何よりも大切だと考えています。
聞きやすい文章が読めて、お芝居のできる方、その都度、本の魅力に合った声優さんを選定するようにしています。
このように「聞きやすさ」に特化した声優さんの選定ができるのも、今までと違った切り口で個人的には新しい発見でした。
――「聞きやすさ」についてお話ありましたが、kikubon(キクボン)の中で、人気のある声優さんはどなたでしょうか?
下山吉光さん、浅井晴美さん、新居祐一さん、山下大輝さん、洲崎綾さんが人気です。
無料版でも聴けるものがあるので、ぜひチェックしてみてください。
幅広い年代に愛される豊富な作品展開
――kikubon(キクボン)のユーザー層はどんな方が多いのですか?
30~40代の男女が多い印象です。
やはり、SF・ミステリーが好きな年代に好んで聴いてもらうことが多い気がしています。
無料版も充実していて、120冊ほどあるので、若い方にも聴いてほしいと思っていますよ。
――無料版の量が非常に多いですよね!人気の作品はどんな作品でしょうか?
やはり、銀河英雄伝説は人気ですね。
石黒監督版のアニメ銀河英雄伝説は全15冊中、14冊はアニメになっているのですが、1冊だけ一部しかアニメになっていないんです。
作品自体が日記形式だったのでアニメにしづらかったという理由もあると思うのですが、朗読には見事にマッチする作品でした。
アニメ出演のご存命の声優さはすべてお呼びしてオーディオブックという形で完結させることができて、ファンの方には大変喜んでいただきました。
――キクボンで完結したと言っても過言ではない、ファンにとってはたまらない作品ですね!
アルスラーン戦記もちょうど朗読を作りながら完結したので、昔の話を思い出すためにオーディオブックで聞き直すなどの使い方をしている方にも喜ばれています。
ミステリーでは映画にもなった屍人荘の殺人、歴史ジャンルでは吉川英治の作品なども人気です。
最近では、アンデルセンなどの童話も好んで聴いていただいているように感じます。
作品名は聞いたことはあるけれど、話の内容までは知らない作品などが好まれているようです。
kikubon(キクボン)がオーディオブックの入口になるように、無料版を増やし続けたい
――今後のkikubon(キクボン)の展望を教えてください。
無料版をもっと増やしていきたいですね。
なぜ無料版を作るかというと、コロナの自粛期間中に学校から「学校の推薦サービスとして推薦させてほしい」という依頼があったんです。
子どもたちの読書機会が失われていると言われている世の中で、学校として子どもたち全員に本を渡すことは現実的に難しい。
「kikubon(キクボン)を使ってほしい」と子どもたちに伝えたいという要望でした。
――無料版も多く、童話や古典、芥川や太宰といった有名な作品も聴けるとあって、お子さんにも推薦しやすいですよね。
はい、そういった点を評価してくださって非常に嬉しく感じています。
また、子どもたちが本を読まないと言われているけれど、スマホは持っていますよね。
入口は無料版だとしても、そういった人達が育っていったときに、またkikubon(キクボン)に戻ってきてくれるのではないかと思うんです。
実は、現在のオーディオブックはほとんどが有料コンテンツです。
でも最初からお金を払うのはためらってしまいますよね。
kikubon(キクボン)がオーディオブックをはじめて聴く人の最初の一歩になってほしいという思いで無料版を今後も増やしていきたいと思っています。
現在はアプリもリニューアル中なので、さらに使いやすくなると思うので期待していてください!
オーディオブック業界の老舗の専門店でありたい
――今後のオーディオブック業界について、どう思われますか?
オーディオブック業界としては、ビジネス書が伸びていくのだろうなとは思っています。
やはりビジネス書を作ってほしいというお声も多々頂きます。
しかし、あまり僕はビジネス書を読まないので、ビジネス書をやっても自分自身が楽しくないので物語を製作しているというのもあるのですが、
我々は声優さんのお芝居で物語を届けるということに特化したい。
もっと言えば、物語は声優さんが読まないと絶対ダメだと思っています。
今後、スマートスピーカーなど機械が朗読してくれる時代がくるかもしれない世の中で、声優さんナレーターさんの読む物語は、コンピューターが再現できない芸術作品になると思うんです。
もちろん機械音源もかわいくていいという部分もあるのですが、声優さんや我々のお芝居の演出というのはその時々のものですので、コンピューターでは全く同じという再現が難しいと思います。
ですので、kikubon(キクボン)はその芸術という部分に深く切り込んでいけるサービスとして頑張りたいと思っています。
――オーディオブックサービスが最近本当に増えてきていますよね。そのことについてはどのように感じていられますか?
サービスは増えてきていますが、みなさん百貨店を目指しているように見えます。
なんでも売っているような百貨店です。
kikubon(キクボン)は物語に特化した老舗の専門点を目指しているので、増えてくるのは大歓迎です。
他社さんも他社の強みを強めてもらって、オーディオブック全体の業界を盛り上げてほしいと思っています。
レンタマン編集部コメント
オーディオブック業界の中でも人気なビジネス書や自己啓発本には着手せず、kikubon(キクボン)がSF・ファンタジーに特化している理由を探ることができました。
そこには、オーディオブックをエンターテインメント、声優さんと作り上げる唯一無二の作品と捉えるkikubon(キクボン)の熱い想いがありました。
コロナの自粛期間中に登録者数は急増したそうです。
自粛期間当初は動画サービスにドハマりしましたが、ずっと見ていると飽きる現象が起きた人も多いはずです。
目で見ることに慣れてしまった私たちは今、新しいエンターテインメントを欲しているのかもしれません。
それは想像力を搔き立ててくれる演技で朗読をしてくれるkikubon(キクボン)の作品たちなのかもしれません。
今後のkikubon(キクボン)の更なる進化が楽しみです!
※記載内容は現在のサービスと異なる場合があります。最新の情報は公式サイトをご確認ください。